shinsha.png

(爪に乗せた色は色づいたイチョウ。普段は爪に色を塗ることもしない癖に現金ではないかと問うたが、愛らしい短刀はついでにとまとめ髪まで手伝ってくれたのだから頭も上がらない。臙脂色の長袖膝上丈のワンピースは余所行きの中でも特にお気に入りの品だった。赤い色を好む主をよく知る真っ赤な瞳の初期刀に教わった楓並木のある場所へ、と彼を誘うことにして、現在。休日の午前十時。)うわー!すっごくない?綺麗な赤!川沿い上ってくと田楽屋さんもあるんだって。お団子もおいしいっていうから楽しみにしてたんだよね。富田さ…んはお団子と田楽ってどっちが好き?(川に沿って歩いて行って、見つけ出した赤い楓の並木道に嬉々としてはしゃいで見せながら。想い人への敬称に少しばかり惑うのは今に始まったことではない。さらりと親しく敬称をぬいて、驚かせて笑ってみたいなと思ってもうどれだけたったか。つい間誤付いてしまうけれど、今日こそは、と、ひそかに決意などもしていた。)私はお団子かな、こないだ歌仙が作ってくれたサツマイモのお団子美味しかったんだよね。(花見団子や月見団子ばかりと思ってた、と忍び笑いを漏らしておいしかった思い出を語りつつ、「どんなお団子があるかなあ」と空想し、川沿いを歩きだすつもり。つい、ちらちらとその姿を覗き見る事ばかりはやめられないけど。)

tmt.png

(明るく天真爛漫な主より供の旨を賜り、先ずは相応しくあろうと洋服の準備へと取り掛かった。モカ色のチェック柄テーパードパンツに白いTシャツをタックイン、ベージュのオーバーサイズシャツを羽織ったスタイルは秋らしく。髪をほんの少し遊ばせたのは刀工を同じくする脇差のアシストだったけれど。慌ただしくも時は巡り――そして、今に至る。)本当だね、見事な赤だ……。これは本丸内ではなかなか見られない光景だね。(連れられるままやってきた先には無数の楓が立ち並び、木々を見遣っては双眸を細めながら呟く。妙な間の敬称へ僅かに疑問を持つと同時、問われたとあらば己が顎に手をかけて逡巡。)私は団子かな。以前、篭手切が遠征のお土産にと買ってきてくれたものが美味しかったから。……君はどちらが好きなんだい?(己が事柄を語るより聞く方が性に合う分、流れるように問い掛け返す。やがて聞こえて来た思い出話には思い当たったように頷いて、)ああ、先日の。うん、確かに物珍しい味だが格別だったね。では、店まで行き着いたら二人で団子を食べようか。……田楽屋という名前のところ、申し訳ないけれど。(どこか可笑しそうに笑いながら、川沿いを隣り合って歩き出そう。そして間もなく、覗き見るのは此方も同じか。静かに切り出す語り口は穏やかに、柔らかく。)……改めてになるのだけど。その臙脂色、君によく似合っているね。楓の木にも引けを取らない鮮やかさだ。

shinsha.png

(合流したときなどは普段は見られない彼の装いにあたふたと落ち着かない素振りを見せていた。格好良すぎてうまく褒められなかったのだ。)ねっ、ねっ。紅葉の景趣もきれいで好きだけど、圧巻ってやつ?こういうの好きだな~。(景色に感じ入ってそのままに喜びを吐露したのち、彼を覗き見ればどうやら悪くは思われていないらしい。くふくふと笑みを閉じ込めるようにして笑う。下見という名目であるのに仲間たちを連れてきたら、という話題にはいきつかないあたり片手落ちか。)篭手切ってばお土産選び上手いもんね、いっつもおいしい。江の皆、仲いいもんね。(件の脇差が土産をもって同じ刀派の彼らが集まる様が目に浮かぶようで、楽しげに笑みをこぼした。)でしょでしょ。うちで食べると珍しい味でも絶対おいしい!って思うから、何でも食べられちゃう。…あははっ、確かに!お土産は田楽にしちゃう?…お土産で食べてもおいしいのかな?(楽しげに笑みをこぼし、彼の言葉に同意して。川の流れに時折乗っていく紅葉の葉を見送り、彼を覗き見。好きなものに囲まれているなあなんて幸福が、ますます大きくなるようだった。)え、……っわ、あ、ありがと~……!これ、お気に入りなんだ。褒めてくれて、嬉しい。へへ。…富田さんも、めちゃくちゃかっこよくて似合ってる!(たちまち頬には紅が乗って、つい立ち止まって。嬉しさを隠しもせずに笑って、改めて彼にも心のままを伝えよう。)

tmt.png

(此方を覗き見る彼女と視線が合えば、そこに宿る笑みに自ずと柔らかく口端が持ち上がる。下見とはいえ、賑やかな本丸内とは異なる二人だけの空間は存外穏やかであり、その心地良さからか本日は一際気楽に振舞っているつもりだ。)ああ、気遣いや戦略に関しては彼や他の脇差たちには敵わない。……ふふ、仲が良いのは君と加州もそうだろう。それから、君と私も。(己の胸に手を当てながら、疑問形では無く言い切りながら微笑む。同意を求めるかのような間の後、歩むペースは相も変わらずゆっくりと。)兎も角、それだけ皆が工夫してくれている証でもあるから有難いね。お土産に田楽……うん、妙案だ。きっと歌仙が美味しく温め直してくれるだろうから、多めに買っていこうか。(ほんの少し他人任せな発言は楽しげな音色と共に。天真爛漫な主につられて、随分と己の心も解かれている事実は最早自覚済み。ともすれば、己が言葉により喜色に頬を染める彼女の姿にも笑みが零れ落ちて。)ふふ……うん、君によく馴染んでいる。服自体が、ではなくて、君の良さを引き立てているからより素敵だよ。……私のこれは君に恥をかかせない為の嗜みだけれど……そうやって褒められたなら、柄にもなく嬉しくなってしまうな。(同様に足を止めながら、口許へ手の甲を当て双眸を伏せる。少々照れているのだとは流石に口には出せず、再び両の眼で見遣る頃、ひと振りの頬は仄かに色付いているだろう。)

shinsha.png

確かに!すっと助けてくれたり好みの味覚えててくれたりするよね、凄くない?へへっ、清光は自慢の初期刀だしね!……っ、う、うん、そうそう!富田さん、めっちゃ優しいし、何でも話せちゃうしすぐ笑顔になっちゃうんだよね、仲良しだよね、私たち。……っへへ、やった、(本丸の仲間たちの事を口にして楽しげに笑っていたものだから、彼と自分の事に話題が転ずれば一度目を丸くしたのち頬に赤みを浮かべながらうんうんと頷き、少し早口にその言葉を肯定して。結びには小さく喜びをかみしめる声を出した。)ね。ご飯美味しいのって幸せだし、いい本丸だなーって。賛成!ふふっ、みんなも喜んでくれるよね!みんなが来る時は田楽屋さんが目当てになっちゃったりして?(われらが厨番長の手腕に関しては一切の疑いもない。たとえ持ち帰った土産であってもおいしく食卓に並べてくれるだろうとわくわくと楽しみにするように。)……富田さんに褒められると、ほんと嬉しい。お気に入りのワンピ来て素敵になれるの幸せだし、富田さんが言ってくれるのが嬉しいし。めっちゃかっこいいよ、富田さん素敵すぎて、すぐかっこいいって言えなかったくらい。……、え、富田さん、照れてる?(照れてうれしいのは自分ばかりだと思っていたから、彼の色づく頬を見ては目を丸くして、赤みを帯びた頬のまま覗き込むようにして彼を見上げて。)

tmt.png

(本丸の者たちのことを語るどこか自慢げな様子を見守り、耳を傾ける。中でも自らと主の関係に対する反応は一等か、「うん、仲良しだ」と同意する言葉は喜色の滲むものであった筈。彼女の采配、心根に惹かれる者は多い。自らもその一片なればこそ。)君の素直な心を、皆が好ましく思っているからこそ良い本丸になったんだろう。……では、団子の感想は君と私だけの秘密にしないと。ね?(後にも今日のことを思い出せるような一つのエッセンスとして。口許に人差し指を立て、共犯者でも作るような物言いは存外無邪気に響く。楓並木の中、言葉を尽くしてくれる彼女の姿もまた、きっと忘れ難い本日の記憶となるのだろう。)照れ……うん、きっとそうだ。君があまりにも惜しみなく言葉を尽くしてくれるものだから。……でも、君の為にあつらえた格好を、他でもない君が格好良いと言ってくれる。これ以上の誉はないな。改めて、ありがとう。嬉しいよ。(真っ直ぐに此方を見上げる視線へ気恥ずかしさを抱きながらも、再び胸へと片手を当て、柔らかに頭を垂れた。同じ朱色を宿す彼女へ眩いものを見るかのように双眸を細めた後、ふと楓並木を見上げて唇を開く。)さて、では行こうか。……君さえよければ、私の腕を。(並び立ちながら、緩やかに曲げた腕を示してみせる。決して強要はしないものの、まるで自らその距離を望む物言いで緩やかに首を傾げてみせよう。これもまた交渉の内。)

shinsha.png

(彼が細やかに耳を傾けてくれることが嬉しくて、ついつい言葉を多く重ねてしまう。仲良しだなんて肯定されたならば嬉しさは留まるところを知らず、頬は締まりのないものへ。いつもの笑みとは程遠い。)んふふ、富田さんってば褒め上手だ。これからもいい本丸にしちゃうから、見ててね、…違うな、手伝ってね、頼りにしてるから。…す、する~!二人だけの秘密、かぁ…!(楽しげに笑みをこぼしてこれからの展望を明るく描く。そんな主としての振る舞いも彼の物言いにはすぐに恋する乙女としてのはにかみに変わってしまう。照れくさそうに、幸福そうに笑っていた。)だって本当のことだし?それに、いっぱい伝えたいなーって思うよ。私のために着てくれたんなら、余計に。……へへ~、よかった!(もうここで二人景色を見て、彼に褒められ、彼が喜んでくれたというだけですっかり満足しそうになっていたが、まだまだお出掛けは始まったばかりだ。足を止めていた分を歩きだす、その前に。)えっ、えっ、えっ。う、腕。いいの…?(仲間たちに抱き着くのとは全く違う。示された腕にわかりやすいほどに狼狽えて、意を決して恐る恐る触れてみる。誰に抱き着いても撫でまわしてもけらけらと笑っていた娘であっても唯一の想い人に触れる時間は緊張する。それでも触れていたい。意を決して彼の腕に腕を絡め、硬直すること数秒。)…ゆ、ゆっくり。行こ?ね?(緊張に慣れる時間が欲しかった。)

tmt.png

ああ、これからも君が笑顔であるように助力を尽くそう。……ふふ、良い笑顔だ。(宣言にも似た殊勝な言葉の一方で、ころころと移り変わる笑顔は心を擽る。思わず転び出る笑みが彼女の指摘する“照れ”へと転じた頃、尽くされた言葉に納得の意を込めて一つ頷いてみせた。互いに化粧の如く纏う朱色は非日常感を色濃くし、いつもの主従じみた関係性から少々外れた距離感は生まれる。故に、自らもう一歩近付こうと試みたのだろうか。腕を差し出した流れはごく自然に、己が望みのままの行動だと首肯と言葉にて示す筈。)勿論だとも。確か、西洋風に言うと……エスコート、だったかな?(知識の引き出しから取り出したようなワードは、此度何かと世話を焼いてくれた件の脇差による入れ知恵か。狼狽える彼女を静かに見下ろす姿はどことなく嬉しそうな表情を浮かべているに違いない。やがて腕が絡む感触は温かく、柔らかに双眸を細めては唇を解いた。)君の望みのまま。今日は君と私の二人だけ、急ぐ必要はないのだからね。(硬直する彼女の姿は物珍しいものだったが、茶化すような質でも無し。同意を述べながら進む足取りは要望通りの牛歩そのものの筈で。最中、ふと木漏れ日の射す方を見遣り指で差し示したのは、少しでも彼女の心を解したい一心であったのやも。)……よく見てみると、同じ木の葉でも微かに色が異なるのか。ほら、見えるかい?あの辺りは君の瞳の色に似ている気がするのだけど。

shinsha.png

(彼から向けられる献身の言葉を嬉しく思うのは一人の娘としてのものか、正しく主としてのものか。んふふ、だなんて楽しげに笑ってはいても恋しい人を目の前にした気恥しさからは逃れられない。スキンシップは彼に向けてはなかなかできなくて。腕を差し出されるのだって初めてだ。)あ、あはは、王子様からのエスコートとか、なんかお姫様になった気分、なんちゃって。(まったく柄ではないことはわかっているためにそうした軽口を口にするのが精いっぱい。狼狽える娘に彼の表情を観察する余裕もないが、触れた腕は暖かくて心臓はますます早くなっていくよう。)そ、そうだね…、…富田さんはどきどきしない?私普段あんまり富田さんとハグとかしないし、こんなに距離近いのあんまない気がするん、だけど!(緊張と恥じらいで近づけずにいるのは自分の方のくせに、距離の近さへの不慣れ故とこの硬直の責任を押し付けるかのように。ゆっくりと、ゆっくりと。田楽の香りはまだまだ鼻腔には届かない。)え、どれどれ……ほんとだ、ちょっと似てる?銀杏並木だったら富田さんの髪色に近い葉っぱもあったのかな。……って、ごめん!(彼のさした葉っぱを探すように背伸びをして、彼と同じ目線で物を見ようとするかのように顔の位置を近づけていた。その行動は無意識のもので、見つけたと視線を彼に向けたときにその近さに気がついて、慌ててつま先に込めていた力を緩めるだろう。)

tmt.png

(王子様にお姫様。例えの文言に瞬きを示し、視線の合わない横顔を見遣る。未だ自称するには大仰な名称ではあるものの、彼女への形容に対しては是と頷いて。)私が王子であるかはさておき……君は正しくお姫様だとも。そう扱われるべき可憐な女性だと思っているよ。(と、諭す物腰は柔らかい。強張った語気で問い掛けられた事象については、ふと一瞬己が胸元を見遣りながら。)確かに君と抱擁ほど近付いたことは無かったね。……きっと、嬉しさが勝っているんだ。(自己見解が正しいのは兎も角、慮る心は絶対的なる本心。彼女がごく自然に背伸びをするように、ひと振りもまた自ずと合わせるように身を屈めていた。結果、思いの外の近距離。息を飲むような瞠目が僅かな沈黙を生む。)――……、(彼女の爪先が背伸びを解いた頃、徐に片手を自らの左胸へ。静けさから体内に響く鼓動の変化には敏感となり――嗚呼これか、と納得した素振りで双眸を細めた。)いいや、謝らないで。……どうやら私も、君との距離にどきどきしてしまったようだから。……それでは、田楽屋への道すがら私色の葉っぱを探してくれるかい?(小首を傾げて尋ねる瞳は柔らかく、どこか甘く弧を描く。そこからの歩みも彼女のスピードに合わせ進んでいくに違いない。時にゆっくり、時に彼女の向く方へと合わせて。そうしている内、近くに良い香りが漂い始めたなら「おや、あれが……」と視線は其方へ向けられるけれど。)

shinsha.png

……お、王子じゃん。絶対。(ぴぇ、とばかりの悲鳴を口の中で噛み殺す。柔らかな物腰で諭されて、まるで当然のことのように言われてしまえば気持ちはやはり落ち着かない。それもこれも、相手が彼だからだ。彼相手でなければ冗談めかして笑う事も出来たろうに。)富田さんとくっつこうとするとこう…なんて言うか…だめになりそうだから、つい。(嬉しいんだ、と、こっそりと彼の姿を覗き見るような視線の動き。つい緊張して強張ってしまう事ばかりが多くて、到底意識なんてしてもらえるはずもないと思っていたけれど。――慌てて爪先を緩めれば、彼との距離は遠ざかる。いつもの20cm差にも頬にさす赤みは抑えられない。)…っ、した?どきどき。(都合のいい言葉を聞いたみたいで、胸元に手を当てる。うん、と彼の問いかけに応じる瞳はますますの喜色を映して。)…ね、私ね。富田さんにすぐどきどきしちゃうくらい富田さんが好きだから、富田さんにも私にどきどきしてほしいなって思ってるんだ。…ふふっ、嬉しいな。(ちっとも望みがないわけではなさそうで。もっと、多くを踏み出せそうな予感がした。彼と共にゆっくりと、景色を楽しむ。彼と自分の色を探して笑いながら、)…あっ、ほんとだ。…外でも食べれるみたいだから、外で食べない?いい景色だし。(茶屋の外に置かれた緋毛氈の敷かれた椅子を指さして。今日は向かい合うより隣り合いたい気持ちも強かったから。)

tmt.png

(緩やかに小首を傾げながら笑う様は肯定でも否定でも無し、けれど喜びや焦りでころころと変化する姿はやはり眩しい。だからこそ曖昧な理由から自らが抱擁されないことに関して、つい視線を上げては見つめ返し。)……それは、私の対応次第で変化するものかい?しっかりと受け止めるよ、他ならない君であるなら。(視線に宿る思いから口にする言葉まで、至って本気の要望である。無理強いではないが、この交渉の行方は如何に。――転じて、縮まった距離が再び離れた頃。問い掛けに「ああ」と頷く表情は尚も仄赤く、そして続く彼女の素直な言葉には一瞬の瞠目の後、双眸は優しく柔く弧を象った。)……好いてもらえているとは、……ふふ、嬉しいものだ。ますます鼓動が騒がしくなってしまう。(深める笑みの奥、囁く言葉は噛み締めるように。自覚は乏しいが宿る想いが故なのか、自らの鼓動を感じながら、そして己が色を彼女が探し歩む景色は何にも代え難い幸いとなった筈。やがて茶屋に辿り着いたとて、それは変わらない。)勿論、君の望むままに。きっと気持ちも良いだろう。さて……君はどの団子がいいんだい?(と、店員への注文を終えた後、隣り合い緋毛氈へと腰掛ける。やがて団子が運ばれてきたのなら、細やかな楓狩りとなるだろうか。いただきます、と手は合わせるものの、先ずは彼女の反応を待つ。見遣る視線はにこやかに感想を求めるような、相変わらずの聞きたがりの様子だ。)

shinsha.png

(どきどきして爆発しそうになるからハグしない、だなんていうのは完全に勝手な都合であり。彼の対応がどうだとかは娘にとっては思案の外、――だった、けれど。)う、うーん、……と、富田さんが、一人でいるときとか。後ろからなら、いけそう。抱き着きに行ってだめだめになったら、普通になるまで待つとか…頭とかなでてくれたら嬉し……いやだめになっちゃうそれは!嬉しいけど!(彼から向けられる本気を感じてしまったから、もごもごと口籠るようにしてから考え考え口に出す。理性、頑張れ。――彼の表情が、その瞳が、もたらすものはただ喜びだ。やっぱり、赤は好き。)ふふ、私もいっつも心臓騒がしいから、お相子だね!…でも私はいつもだから。(張り合うようなその言葉はその実、彼にだっていつも鼓動を忙しなくさせて見せるという決意表明の裏返し。一度口にしてしまえばせき止めていた気持ちはまるでそのまま流れて行くかのようで。声ははしゃぎ、彼の色を喜んで見つけただろう。)やった!景色もいいし、向かい合うより隣で座ったほうが近いかなって。今のうちに近いの慣れときたい!私は……あ、きな粉団子美味しそう!これにする!(メニューとにらめっこするのはそう長い時間もかからない。いただきます、と手を合わせて、きらきらとすら感じるお団子をまずは一口。)…っわ、美味しい~!ふふ、好きな味だ、嬉しい!(幸福を隠しもせずに笑って、彼を見た。)

tmt.png

(考えを二転三転、彼女の百面相は常々飽きが来ないが本日は一入か。つい口許へ片手を寄せながらの笑みは、揶揄いではなく愛おしさ相俟ってのもの。)だめだめな君にも興味があるのだけど……頭は撫でても?恐らく加州などには見せない君の一面だろうから、見逃したくないな。(抜け目無く語る様がどこか楽しげなのは胸の内の無自覚による独占欲からか。理性など、所詮取り繕っているだけなのかもしれない。――故に、決意表明や付随する内情について知れば知る程に手放せないような心地を得る。)そうか、君はいつもこんなにも……。では、今日からは私も同じ心地を味わう、と覚えておいて。(まるで秘密を語るように人差し指を口元に立ててみせる表情には未だに熱が帯びる。それもやがて落ち着いたなら、弾む声でメニューを差す姿に頷いた後、自らは醤油団子を注文。そうして数分、温かい茶と共に運ばれてきたそれを幸せそうに食べる彼女の姿には文字通りの釘付けで。)うん、それは良かった。……君は実に幸せそうに食べる。可愛らしいな。(自らの膝に肘を突き、隣から覗き込む視線と共に心のままの言葉が溢れる。ふと手を伸ばし「ほら、付いてる」と彼女の口許に僅かついていた粉を拭い、続けて自らも団子を頬張った。「ん、美味しい……まさに絶品だね」という素直な感想は大きな首肯と共に。そこからは互いの団子を交換しようか、なんて案も出ただろうか。やがて食べ終わったなら土産の田楽も手配して、漸く当初の予定の大体をなぞったことになる。――が、今日が終わるにはまだ惜しい。)さぁ、まだ帰るには早い。もう少し散策を続けよう。次は……うん、手を繋いでみるのはどうだい?(そう言って、腕を差し出した際よりも近しい距離感で掌を彼女へと差し出そう。秋深まり、二人の間にもまた変化が訪れる。それは甘やかな紅葉の如く、これからも。)

shinsha.png

(きっと誰に撫でてと甘えるより、誰を撫でて甘やかすよりもはるかにだめだめになって格好なんてつかないに違いないのに、彼の笑みを覗き見ればとくんと胸は鳴ってしまう。)…な、撫でてくれると嬉しい…な?私だって頑張ってくっつきに行くんだから、富田さんからのも欲しい、な!清光はそういうんじゃないし、だめになっちゃうのも富田さんだからなんだよ。(いくらスキンシップ好きで初期刀との触れ合いもままあることとはいえ、可愛く信頼のおける彼に今更恥じらいが浮かぶはずもなし。どきどきしてだめだめになるのは、彼が相手だからに他ならない。)ん、っへへ、うん。いっぱいどきどきさせるんだから。遠慮しないよ。(躊躇いだとか彼にどんな気持ちをさせるかだとか、臆病な側面は蹴っ飛ばしてしまって、彼の熱を帯びた表情に見惚れてしまう。彼が同じ気持ちになってくれる、となれば、自然と自らの胸元に手は伸びて。――彼が隣にいてくれて、美味しい団子を食べられる。それは幸せに相違なく。)……っ、あ、りがと~!私、富田さんに可愛いって言ってもらえるの一番うれしい!(誰もに遠慮なく可愛いと言ってのける主ではあるけれど、一人の娘として立ち返った時に恋しいひとからのその言葉は何よりの幸福だ。ふにゃ、と蕩けるように笑みを浮かべていたものだから、粉をぬぐい取られた折にはぴしゃんと硬直して。まるで射抜かれたような心地。「富田さんってなんでこんなにかっこいいの…?」とつい零れた感想は気恥ずかしさを包むかのように。予定は予定。帰りに関しては初期刀も特に気にしてはいなかったから、)えっ、いいの?やった、富田さん分ってる!……手を!?ま、まって…~うん!…ねえ大丈夫?私変な汗かいてない?(ぱあっと顔に喜色を浮かべて延長戦を大喜びで受け入れる。腕をとるのは多少なり慣れた気もするけれど、差し出しかけた手は団子を食べた手。彼とつなぐなら緊張で汗ばんでいるかも。あわてて手持ちのウェットティッシュで手をぬぐって、緊張しながら彼へと手を差し出した。色づく二人の関係は、甘く満ち足りて行くようで。)