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(すっかり秋らしくなった頃、散歩の名目で彼と二人きりでお出かけする時間を得たならば。どうせなら早いうちからできるだけ多くの時間を彼と過ごしたいからと、張りきって支度を済ませる。マスタード色のニットに紅葉色と胡桃色のチェックのロングスカートに身を包んで本丸を出た。道中、最近まで緑色だったと思っていた葉っぱが見事に色づいているのを目にしては「この景色を見ると秋だって感じるね!」なんて他愛もない言葉を投げて彼に笑いかけながら、ほどなくして辿り着く甘味処。お品書きにざっと目を通しつつ、それを彼にも見せて。)私は限定の栗きんとんときなこ味の白玉団子ってもう決めてるけど……豊前くんはどれ食べたい?(にこにこと上機嫌で問いかける声が、平素より一段と弾んだ響きを帯びてしまうのは、隠そうとしても隠しきれない浮ついた気持ちゆえに。)

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お、準備できたか?(オフホワイトのニットに黒のナイロンジャケットを羽織り下は黒のカーゴパンツといった姿で、支度を終えた様子の相手と合流が叶ったなら「めかし込んだみてぇだな」と笑う。)あったかそうな格好してっけど、寒くなったらいえよ。季節の変わり目ってやつは風邪ひきやすいからな。(音を立て戸を開けたまま相手を待ち、彼女が外へと出たのを確認してから中にいる刀剣男士に「ちっと行ってくる」と声を掛けて戸を閉めた。そうして、普段『疾さ』を求める男は相手の歩幅に合わせて歩み始めるとしよう。)あぁ、そうだな。絶好のツーリング日和……っと。悪い悪い、今日はアンタに付き合うんだった。――こーゆー景色もいいな。(太陽の光に照らされる色づいた葉を見上げるは、このようにじっくりと対象物を見られるのも散歩の醍醐味だと自分だって知っているがため。それから視線は相手へと移り、「今日の目的地は甘味処だっけか」と予定を確認しつつ、心地よい秋風に揺られながら目的地へと。)あんがとな。俺は……そうだな。(相手から受け取った品書きに目を通し始めたものの、弾んだ声に一旦視線を上げる。其処には自分が想像した通り上機嫌な相手の姿があって、ぱちくりと瞬きした後ひとつ笑いを零したなら。)ほかに食べたいもんねーの?(甘味を前にして浮かれているのだろうと、勝手に解釈を。)

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うん!バッチリ!豊前くんもバッチリだね、かっこいいよ!(投げかけた褒め言葉が変に重い響きを持たなかったかを内心で気にしつつ、常と違う彼の装いにテンションが急上昇するのは言わずもがな。己の格好にも感想を貰えれば「豊前くんとお出かけだもん!張り切っちゃった」とほんのり照れたように笑いかけて。)へへ、分かった。ありがとう!(彼に先導されて外に出て、本丸の刀剣男士らには「いってきまーす!」と元気に一声かけて、甘味処へ歩き出す。)あぁー、たしかに!ツーリングにも最高の天気だよね!今度はツーリングも一緒に行けたらいいなぁ。……でしょ!?赤とか黄色とかオレンジとか、温かい色がいっぱいに広がってるのがいいよね。で、落ち葉を集めて焼き芋したりとか。(色とりどりの葉を見渡して嬉しげにきゅっと瞳を細め、口にするのが食べ物の話題になりがちなのは御愛嬌。目的地の確認には正解と言わんばかりに大きく頷き返し――それほど混んでいない甘味処に入れば、己の注文は早々と決めて彼がどれを選ぶのかと楽しげに見守っていたが。)えっ?んー、おしるこも気になるけど、流石に食べ過ぎな気もするし、また今度にしようかなって。(恋する年頃の娘らしく体型を気にする様子も覗かせつつ、)……あ、豊前くんもこのあと行きたいところ考えておいてね?(甘味以上に彼と居られる時間に浮かれていたが、まずは彼の注文が決まれば一緒に注文するつもりで。)

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っははは、照れるちゃ!いつもん格好でもよかったけどさ、あれだといかにも主とお付きの刀剣男士って感じだからな。今回はそういうのじゃねーんだろ?(もしそうであったなら、態々自分に声を掛ける必要もなかっただろうから。近侍相手とはまた別の信頼を彼女から得ているようで何だかむず痒く、それでいて嬉しかった。応えられる限りは応えたいと思っての判断だ。手を伸ばし数度軽く彼女の頭を撫でたなら、本丸を後にしよう。)行きてえなら、いつでもつれてってやるよ。いつもの景色見に行くんでもいいし、遠乗りもいいよな。(望むのなら今度はすぐにでも来るのだと笑い掛けて。)なんだ、そういう色が好きなのか?加州とかも好きそうだよなぁ。焼き芋、ねえ。庭掃除した後にでも提案すりゃ、乗るやつらは居そうだけどな。もし企画すんなら、俺からも声掛けとくよ。裏山に栗拾いに行くのもいいかもな。――汁粉か。んじゃ、そっちは俺が頼むよ。先に味見しとくってのもいいだろ?(相手の返答を聞く前に早々に店員へと声を掛けたなら、二人分の注文を済ませてしまおう。)……で。俺の行きたいところって、アンタの行きたいところはいいのか?せっかく本丸の外に出てんだ。いろんな店に寄りゃいいってのに。(不思議そうな顔をして問うが、遠慮している様子でもないから「……万屋とか?」と何とか候補地を絞り出す。場所自体より、疾さを求める刀剣であるので。)

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普段も男前だけど、お散歩スタイルもすっごくいいよ!いつもは見られないからお得な気分だし、へへ。(近侍という仕事仲間として頼りにしているのは言わずもがな、それ以外でも彼と過ごしたいのだとアピールする意図が伝わっているらしいと分かれば、娘の笑みも一段と深まるもの。頭を撫ぜられると嬉しくも照れてしまうのは乙女心ゆえ。)ほんと!?じゃあ次の休みにでも!遠乗り行ってみたい!(と彼の快い返事に甘えてすかさず約束を取り付けたがる。)うん!ネイルも赤っぽくすること多いし。……豊前くんは?何色が好き?焼き立てのお芋、ほっくほくで美味しいんだよー。あ、栗もいいねぇ、栗ご飯が最高に美味しい季節だし。え、いいの?豊前くんの食べたいの頼んでいいんだよ?(と心配そうに首を傾げるも、瞬く間に注文が済んでしまえば何も言えず。)ん?私は豊前くんと紅葉見たかったのと此処で栗きんとん食べたかったから、希望は全部叶ってるし。忙しなくあちこち回るより、二人でのお出かけだからゆっくりしたかったんだ。……って、のんびりするの苦手かな?(疾さを重んじる彼の性質を思えば小さく眉を下げもしたが、新たな候補が告げられると「万屋!いいね、行こう!掘り出し物あるかなー?」と声を弾ませて。そうして会話を交わすうちに注文の品が運ばれてくるだろう。)うわー、すごいね!どれも美味しそう!(輝く瞳は並べられた甘味に釘付け。完全に花より団子だ。)

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お?今日はえらく褒めてくれんじゃねーか。さては何か企んでるな?(揶揄い混じりに笑って、傍から見れば主従関係とは思えないような日常的なじゃれ合いの一コマにも見えたかもしれない。)へへへ。休み取んなら、ちゃっちゃと仕事片付けねーとな。松井のやつが手伝ってくれっといーんだけど。(生憎と字が多いとしか思えない事務の仕事は苦手で、畑仕事もまた然り。自分に出来ることと言えば、戦場を誰よりも疾く駆けることと――ご機嫌な様子の相手を見下ろし、「約束な」と柔和な笑顔とともに言葉は紡がれた。)俺は特に色にこだわりねえが、強いていうなら赤かな。一緒だ。(他意無く自身の好みに関する回答を。食の話題へと移れば、暫し逡巡のため視線を宙へと投げた。)純粋に芋のことなら桑名のが詳しいだろーけど……焼き方までこだわりとかあんのかな。 俺も食うもんに悩んでたから、アンタの意見は参考になったよ。(注文をし終えた後、人当たり良く店員に品書きを手渡してから視線は再び相手へと戻された。)いや、いいよ。ついこの間も、ほかのヤツから疾過ぎだっていわれたばっかだしな。まあ、のんびりしたかったっていうんなら俺とじゃないほうがよかった気もすっけどよ。(それでも彼女は自分を選んだという事実に表情を崩す。時を置かずして運ばれてきた品を前にしたなら、)おー、焦らずたんと食いな。こいつらは逃げも隠れもしねえからさ。

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え゛っ。ま、まさか、企んでるわけ、ないよ?!ないない!(実際、彼と二人で過ごして主とは別に異性として意識してもらおうと企んで誘ったのは事実。図星を指された娘の声は露骨に裏返って上ずっった。)うわっ、そうだよね……私も頑張らなきゃ!松井くんのお手伝いもピンチのときは考えてみる!(他の刀の力を借りることも前向きに考えつつ、新たに結ばれた口約束に頬が緩みっぱなしなのは不可抗力。)豊前くんも赤!?やった!……豊前くんと一緒だと、いつもよりもっと嬉しい。(この先も赤ネイル率が高くなるだろうし、他にも赤色グッズが増えるのは確実で。)焼き方って、そんな色々あるの?違いが分かる気しないけど……芋奉行みたいだね。それならまあ……けど、私のことは気にしないで豊前くんが気に入ったのを選んでね、これも約束だよ?(自身の意見が役立つのは大いに嬉しいが、彼の好みが最も大事だと強引に追加の約束を求めて。)豊前くんといえば疾さだもんね、それだけ譲れないものがあるってすごいことだと思うよ。……ゆっくりするの苦手だって分かってて、それでも私は二人がよかったの。豊前くんだから。(力説しすぎたとすぐに反省したが、本音に違いないから撤回はせずに。そして運ばれてきた甘味に目を奪われ、まず栗きんとんに手を伸ばす。)うん!いただきまーす!……っ、んー!おいひー!(焦らずと言われたのに、美味しさにつられてつい早食い気味に。)

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その反応、怪し過ぎねーか?(思いのほか動揺する相手の姿に「さっさといったほうがラクになれっぞ」と宛ら取り調べのよう。とは言え、終始笑い交じりのもので責めるつもりもなければ無理して問うつもりもなかった。)俺と一緒だと?ふぅん、……じゃー他にも俺と一緒のヤツ探してみっか?万屋にでも行ってさ。揃いのもん買うってのもいいだろ?(ひとつ提案をしてみたものの、彼女が嬉しいという“一緒”が自分が思っているものと違う可能性もあるかと、相手の反応を窺うとしよう。)どーだかな。まー、鍋奉行も居りゃ焼肉奉行も居るし、芋奉行が居たっておかしくはないよな。(数名を思い浮かべて、こだわりという点であれば自分も『疾さ』においては同様であるから気持ちが分からないでもない。)っははははは!わかったよ。けど、アンタが気になってるもん食いたかったのは本当だからさ。(約束だと言われてしまえば、ぱちりと瞬いて「約束だ」と笑みを返した。)おー、……そうだな。(少しだけ歯切れの悪い回答は目下の悩み故。しかし、続いた相手の言葉には可笑しげに笑い声を零して。)そりゃよかったよ。アンタとなら、たまにゆっくり過ごすのもいいかもな。……らしくねーこと言ってるって思ったろ?(先を読むように言葉を続けたなら、相手に向け楽し気に笑む姿があった筈。)焦んなっていったってーのに。ほら、こっちも食ってみな。(とは、自身の前に置かれた汁粉のこと。)

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いやっ、豊前くんがいきなり驚かせるから!大げさに驚いちゃって!(余計に悪化する動揺ぶりは余計に誤解を招きそうだが、咄嗟に演技が出来る器用さを持たぬ女は「違うから!豊前くんとお出かけしたいって結構前から企んでただけ!」と早口に白状して。)えっ、いいの!?探す!すっごい探すよ!お揃いの……っふ、えへへ……身につけられるもの、ピアスとか……そういうのがいいなー。(彼に提案されたときの女の反応たるや露骨すぎるほどの舞い上がりぶりで、頬を紅潮させて浮かれた声を響かせる。)だよね!?他にも探せば本丸には色んな奉行が居たりして。(それを探してみるのも面白そうだと楽しげに笑いながら、)そう思ってくれたのも、ほんとに嬉しいから、だから私も豊前くんの好きなもの知って、食べてみたいなって思うんだ。(お互い様なのだと緩く笑いかけて。けれど、続く彼の返答が平素と違ってどこか煮えきらないように感じたなら、疑問そうに丸い目で首を傾げて。)……っ!う、ううん!らしくないことでも、私とならしてもいいって思ってくれたのが、それだけでもうとんでもなく嬉しくて、ドキドキするというか。(実際、胸の鼓動は普段の何倍も騒がしくて、頬もまだ火照ったまま。)だって、美味しくてつい!いいの?じゃあちょっとだけ、いただきます!(と少しだけ彼の汁粉を分けてもらって口に運ぶと、)ふぉー!これも甘くて美味しい!(また一段と破顔した。)

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ふぅん。俺と出かけたかったんなら、いってくれりゃよかったのに。(相手が隠し事を苦手だと分かっていて、案の定早々に白状してくれた事実を聞くも何をそんなに躊躇ったのかと疑問に残り首を傾げる。主の気分転換にと言えば、出かけることなど容易かっただろうと。)そういうことは、ちゃんと言ってくれるとうれしいよ。そしたら、次からは頃合い見て連れ出してやっから。俺についてこれっか?(少しでも彼女の気分が晴れるのならばと笑んで、続けた言葉は気負わせないように揶揄い口調で紡がれた。)俺は気持ちよく走ってて落とす心配がねーもんがいいな。(「身に付けられるものねぇ」――走りにおいても戦闘においても、彼女の仕事においても邪魔にならないものが良いだろうと。「ぶれすれっととかどーだ?」と提案を投げ掛けるが、結局は見て決めるが早いだろうかと思いつつ、楽し気な様子の相手を見て男もまた笑いを零す。)そーか?どきどき……はわかんねーけど、アンタがそういってくれんのは嬉しいよ。(ふわりと微笑んだが、何処か挙動が可笑しいような相手に手を伸ばし、グローブを付けていない手の甲で相手の頬に触れて、「ちと熱い気がするな、でーじょーぶか?」と心配げに見遣った。)そりゃよかったよ。……主。話があるんだ。食い終わった後でいいから、聞いてくれっか?(笑う彼女を見ていた柔和な目は穏やかに決意を秘めたものへと変えて、真っ直ぐと見つめよう。)

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ずっと思ってたけど、なかなか言う勇気が出なくて!断られたらとか不安だったし!(此処まで来たら、もう下手に隠しても仕方ないと赤裸々に吐露する声はちょっと拗ねたよう。)……うん。もう変に溜めないで言うよ。我慢は向いてないってわかったし。豊前くんの疾さには敵う気しないから、手加減してほしいなー。(と軽口叩いて笑いながら、彼の提案には「ブレスレット!いい!すっごくいい!いい赤色のあるかなー?」と大賛成でブレスレットに狙いを定めて視線を巡らせる。)……っ、あり、がと。(感謝の言葉も挙動不審になったのは否めないが、さらに伸びた彼の手が己の頬に触れたなら顔がさらに赤くなるのは当然。「だっ、だいじょぶ!風邪じゃないから!」と強めに元気アピール。)……もちろん。豊前くんの話したいこと、全部聞かせてほしいよ。(紡がれた願い事に迷わず首肯を返す。最近、彼が時々悩ましげに見えるのには娘も気づいていたが、すぐに言えることならすっぱり言ってくれる彼の性格を思えば、まだ口に出来ない理由があるのだろうと詮索はしなかった。だから、彼が言おうと決意してくれたことが有難く、それがどんな内容であっても全て聞き届けようと、こちらも決意を固めて彼を見つめた。)……ふー。ごちそうさまでした!(栗きんとんに続けて団子もぺろりとあっという間に平らげ、満足そうに手を合わせる。)――それで、えっと。豊前くんの話、聞かせてくれる?

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そりゃ先約がありゃ断ることもあっかもしんねーけどさ、理由もなく断ったりしねえよ。――だから、約束な。(またひとつ、彼女との約束を重ねる。「そうそう、適材適所ってな」と言葉を締めれば、甘味処までの道中ですっかり秋の季節となった風を受け「風が気持っちいい~。帰りは走って帰らねえ?加減してやっからさ」と相手へと笑い掛ける男の姿があった筈。)いい色、あるといいな。鮮やかな赤もいーけど、ちと暗めの……茶色がかったヤツもいいかもな。(相手の目を暫しじっと見つめて、その色もまた良いかもしれないと。)そーか?(相手が否定している以上追求はせずに、黒のナイロンジャケットを脱いだなら「ほら、渡しとくよ」と相手へ渡そうと。「着ねーなら腰にでも巻いとけって」とは、男なりの気遣いだ。此方かの申し出に対し了承してくれた相手には安堵の息を吐いて、自身も汁粉へと口を付け「ほぅと甘いけねぇ、身ぃ染みっわ」と感想を零した。)ご馳走様でした!……お、あんがとな。うまかったよ。(食後にと温かい御茶を持ってきてくれた店員へと礼を告げてから彼女にも渡し、自分の分を一口飲む。話を促されるのは、分かっていた。)――旅に出ようと思うんだ。いますぐってわけじゃねーけど……俺がこだわる『疾さ』ってのが何なのか、見たくなった。(心中を吐露してから、相手を見る。旅に出るということは、目の前の彼女を本丸に置いていくということだ。)

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そうなんだけど、でもさー……。うん、約束ね!(不安が吹き飛んだような表情で破顔して元気に首肯した。甘味処へ向かう道中、秋風に心地よく瞳を細めつつ「だね!ひんやりしてて丁度いい!……えっ!?手加減してくれるならいいよー、二人で走って帰ろう!青春って感じ!」と思わぬ提案に驚くも、さほど考えもせず賛成するのは彼と一緒なら楽しいのが分かりきっていたから。)茶色がかった……赤銅色とか、深紅とか、そういう感じかな?大人っぽくていいかも!(普段の自分はあまり選ばない色でもあり、新鮮だし彼も身に着けやすそうと思えば再び首を振る。――と、流石に彼への恋心ゆえ赤いのだとは勢いでも吐露出来ぬまま、差し出されたジャケットにどぎまぎしながらも有難く頂戴して腰に巻く。そうして甘味も存分に堪能し、お汁粉を食べる彼の姿も見られたなら大満足。食後の茶を啜りながら、彼の話に耳を傾ける。明かされてみると、それは多少驚きはしても納得した顔になって。)……そっか。それで悩んでたんだ。わかった、もちろん応援するよ。……けどね、すっごく寂しいと思ってるのも、ほんと。豊前くんと長い間、離れ離れになっちゃうの……物凄く、寂しい。豊前くんが傍にいると、ドキドキして、でもそれ以上に安心するし、幸せだーって思うから。(主として見送る覚悟は出来ている。けれど、彼に恋する者としての寂しさも隠せない。揺らぐ感情は下がる眉尻に表れて。)

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そうなんだけどそうじゃねえっていうか……アンタの目の色みてぇなきれーな色。(相手のように具体的な色名が出てこなかったものだから、この表現ならば相手にも伝わりやすかろうと。とは言え、揃いのものを買うのであれば互いに気に入る色が良いと、「実際見て選ぼうぜ」と笑い掛けた。甘味を食べ終え、一息吐いてから言葉を紡ぐ。彼女なら最後まで刀剣たちの話を、思いを聞いて、受け入れてくれるだろうことは分かっていた。反対されることもないだろうと、彼女にはそんな理由ありもしないだろうから。故に、彼女からの言葉を聞いて少しだけ驚いたように目を見開いた。)――そんな顔、させるつもりじゃなかったんだけどな。(少しだけ憂いを帯びた笑みを浮かべて相手の頭を少しだけ乱雑に撫でたなら、御茶を飲み干し。彼女を待って勘定してから甘味処を出て、その手を引いて歩み出す。手を握り返してくれようとくれまいと、どちらでも良かった。)違うよ。(万屋へと続く道中、脈略もなく言葉を発する。)一番悩んでたのは、それじゃない。(赤い瞳で射抜くように真直ぐに相手を見遣ったなら、)アンタをひとり本丸に置いていきたくないって思ったからだ。江のヤツらもいるし、アンタの初期刀だって……俺が本丸に来る前から仲良くしてるヤツらがいるってことも、そいつらが頼りになるってことも知ってっけどさ。何でだろうな。(何度走っても、自分の中にある感情がわからなかった。)

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~~っ!ずるいよ、そういうこと言うの……。また顔熱くなる……あ、具合悪くないから!(飛び出しそうに双眸を見開き、唇を小さく震わせて言葉を失う。無論、悪い意味での衝撃でなく、他意がないと知りながらも嬉しすぎて動揺を隠せないから。「だね!私も大人っぽいの着けたいし、シンプルでかっこいいのにしよう!」と笑顔で頷き返した。――その後、打ち明けられた話は当然の如く肯定して快く送り出す気でいたが、寂しさが滲んだのは主としては不覚だ。)え、あ……ごめん!けどほんとに本気で全力で応援してる、それは絶対間違いなくて!(寂しさは己個人の問題だと誤魔化すように首を振り、撫ぜられる頭に仄かに眉が下がる。店を出た後、手を引かれたならそれを振り解けるはずがなく。)えっ?(何に対する否定か咄嗟に分からず、きょとんとして彼を見つめ返すと、存外に真剣な瞳に息を呑む。)私を?そんなに頼りない主に思われたんならショックだな――っ!……置いていかれるとは、思わなかったよ。けど、寂しいって思ったのは……私が、豊前くんを勝手に特別に思ってたから。声が聞けると嬉しくて、どんなに疾くても見失いたくなくて、傍に居たいって思うのは、豊前くんだけ。……私ね、豊前くんのこと、大好きなんだよ。(遠くないうちに長く離れる事実が重みを持ったからか、言えるうちに言わねばと、気づけば秘めるはずの本心を真っ直ぐに語っていた。)

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っはは、疑っちゃいねーよ。アンタはそういうヤツだ。(だから、尚更そんな顔をするとは思わなかった。彼女の気分転換にとついてきたつもりなのに、これでは本日の近侍失格だと。しかし、時間を共に過ごすうち今の自分の心境を伝える良い機会だとも思えて。本丸では彼女を呼ぶ声が絶えないが、今日このときだけは彼女と二人きりというのもあったかもしれない。取った手が拒まれないのを良いことにそのままにして、相手に合わせた速度で万屋に向け歩み続ける。道すがらの紅葉を見遣った後、相手へと視線を戻した。)……俺はさ、アンタから気に入られてるってのはわかってたよ。それは単に付き合いやすいからだと思ってた。――アンタがいってる“特別”ってのは、そういうのとは違うんだな?(立ち止まって確認するかのように問い掛けたなら、柔和な表情をして笑む。)俺も、アンタのことは好きだよ。特別かって聞かれりゃ、俺を顕現してくれた審神者で今の主なんだから当然だ。――けど、それだけかっていわれると違う。うまくはいえねーんだけどさ、旅に出たらその辺りもわかんじゃねえかなって思うんだ。(自分自身のことさえ分かっていないままで、抱くこの感情を伝え切ることなど出来なかった。)……っだから、俺の帰りを待っててくんねーかな。俺っていうヤツのことを知れたら、この感情がアンタと同じもんから来てんのかもわかる気がするんだ。

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そ、そう?疑ってない?だったら、いいんだけど!(元より彼が自分を疑うような性質で無いと知りながら、それでも強調したのは絶対に誤解されたくないことだったから。繋がれた手をドキドキと握りつつも大きな勇気を貰って、彼と二人きりで居られる貴重な時間を大事に堪能する。万屋へ行く道がもう少し遠ければと、そんな子供じみたことまで考えながら。)えっ。そうなの!?いや、確かに話しやすいと思ってたのも本当だけど、そう思う子なら他にもいっぱい居るし……豊前くんは、それだけじゃなかったよ。たった一人だけの、特別だった。(彼の言葉を噛みしめるように反芻しながら、こくりと重々しく頷いて。)……っ!それは、うん……すごく、有難いなって思うよ。主として。……え?そうなの?そっか、ならますます全力で送り出さないとだね。(彼が旅での経験を通じて自分の中の胸の内に何らかの決着をつけ、答えを出してくれるというなら、己がそれを応援しないはずがない。たとえ、導かれた答えが己の抱く感情と同じでなかったとしても構わなくて、ただ彼の悩みを解決する糸口が見つかるならこんなに嬉しいこともない。)もちろん!待ってるに決まってるよ、当たり前!旅に出る前も、旅に出てて離れてる間も、それに……戻ってきてからも、私は豊前くんが大好きだってこと、忘れないでくれたら嬉しいな。(力強く待っていると断言したなら、そろそろ万屋に到着だ。離れている間もお揃いの物を身に着けて居れば、彼も遠い地で頑張っていると励まされるだろう。そう願いを込め、彼と相談しながら選んだブレスレットは新たな宝物に仲間入りを果たすはず。)

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そこで”だった”っていわれっと、……なあ?なーんか複雑なんだけど。(ジト目になって相手を見遣るが、「冗談だ」と笑い声を零し柔和な笑みを浮かべよう。続けた「嬉しいよ」の言葉に今の自分自身にとって?偽りはないが、誰にでもひとつやふたつ言えないことがあるように――自分も、また。江のヤツらにさえ言っていない心中を彼女へと話すには、少しばかりの勇気が必要で。けれど、言葉伝えた後も何も変わらないままの彼女が自分の隣りに居てくれたことに安堵し、同時に胸の内に何か温かいものが溢れ出たような。空いた手で自身の左の胸元辺りに軽く触れ、小首を傾げた。)そんな未来の話、今しちまってもいーのか?まーでも、あんがとな。(彼女に話を聞いてもらったことで、少しばかり心が晴れたような。自分は、自分自身と向き合う必要がある。きっとそれは、自分がこれからもあの本丸に居続けるのであれば必要なことで。それから、)主。俺のは、まだアンタと同じ感情なのかはわかんねーけどさ。俺も、アンタのこと大好きだってことは忘れないでくれよな。……思ったよりいうの照れるな、これ。(「よく真正面からいえたな」と少しばかりの感心の色を見せてから破顔して、再び彼女とともに万屋へと向けて歩き出したならもう暫く他の刀剣たちが居ない二人きりの時間を過ごすとしよう。万屋にて目当ての品を見つけたなら、当初の予定通り揃いの赤を選ぶか、それとも相手の瞳と似た色を選びたるか。彼女と楽し気に話し合った末、購入した品物はいずれにしろそれから男の手元で見られた筈。そうして、きっとそれを男が自分自身を見つめ直す旅先で人知れず見ることとなるのもまた。――それが速さの先で見つけた自分の居場所で自分の帰るべき場所への道標となるのも、もう少し後の話。)